市井ケンジロウの独り言

趣味で文学・音楽を創作している者です。

すぐ感動して泣く人に対する違和感

 映画や音楽などを鑑賞するとすぐ感動して泣く人がいる。こういう人は「優しい」とか「感受性が豊か」とか言われがちだが、実際は単純に感情表現が豊かなだけだと思う。むしろ感受性が豊かな人間の代表格である芸術家に結構寡黙な人が多いということを考えると、何でもかんでも感動してしまう人は俗物っぽい印象すらある。


 それに、すぐ感動する系の人たちに対して自分は底知れぬ恐怖心を抱いてしまう。すぐ感動するということは「流されやすい」「移ろいやすい」ということでもある。例えばSNSで近隣諸国における反日デモを見ると、怒り狂って憎悪表現を平気で口にする人がいる。かと思えば、その近隣国の旅行者が現地の人に助けてもらったという投稿を見ると「なんだ、本当は良い人たちなんだ」と180度態度が変わったりする。と思いきや、その近隣国の有名人が領土問題について言及すると「やっぱりうざい」などと言って、差別発言のオンパレードとなることもある。


 真に優しく感受性が豊かな人間とは、その衝動的な感情を想像力と理性で制御できる人間ではあるまいか。そういう人間になるために、知見を広め、思考を深化させることが大事だと思うのだが、SNSの普及を見るにつけ、もう取り返しのつかない段階まで人類は来てしまったような気がする。すぐ感動する系人間は今後も増殖し続けるだろうし、その行く末にSF的なディストピアの世界が待っているとしたら、あまりに虚しい。